MENU

一級建築士が教える「トレンド間取り」との向き合い方——みんなと同じで、本当にいいの

SNSを開けば、素敵なマイホームの実例がたくさん流れてきます。

洗練されたリビング、使いやすそうな収納、憧れるような空間。
「こんな家に住みたい」と思うのは自然なことですし、SNSで情報収集するのはとても良いことです。

ただ、設計の仕事をしていて最近感じることがあります。

「なんだか、みんな同じ間取りになっていないか?」

打ち合わせで出てくる要望が、どのお宅もかなり似通ってきているのです。
もちろんそれが悪いわけではありません。
でも、トレンドに引っ張られすぎて、本当に自分たちに合った家づくりができているのか——少し立ち止まって考えてみてほしいと思うのです。

目次

今、人気の間取りトレンドを整理してみる

まず、最近よく要望に挙がる間取りのトレンドを見てみましょう。

通り抜けできるシューズクローク

玄関から土間続きでシューズクロークに入り、そのまま室内に上がれる動線。
靴だけでなくベビーカーやアウトドア用品も収納でき、来客時は玄関をすっきり見せられるのがメリットです。

ランドリースペース+ファミリークローゼット

洗濯機のある場所に室内干しスペースを設け、隣接して家族全員の衣類を収納するファミリークローゼットを配置。
「洗う→干す→しまう」が一箇所で完結し、家事効率が上がると人気です。

キッチン横並びダイニング

キッチンのワークトップと横一列にダイニングテーブルを配置するスタイル。
配膳・下膳の動線が最短になり、コミュニケーションも取りやすいと支持されています。

壁掛けテレビ+エコカラット

テレビを壁掛けにし、背面にエコカラット(調湿タイル)を施工するスタイル。
見た目がすっきりし、空間のアクセントにもなるため、リビングの定番になりつつあります。

トレンドを取り入れること自体は悪くない

これらのトレンドは、どれも理にかなった部分があります。
実際に採用して満足されている方も多いですし、SNSで見る実例が素敵なのも事実です。

憧れるのは当然ですし、「みんなが採用しているなら安心」と思う気持ちもよくわかります。

ただ、気になるのは「これが入っていないと家づくりの意味がない」とまで言う方がいることです。
ファミリークローゼットがないとダメ、横並びダイニングじゃないと失敗、シューズクロークは通り抜けじゃないと意味がない——そんな声を見かけることがあります。

本当にそうでしょうか?

家族も敷地も、一軒一軒違う

当たり前のことですが、各家庭によって家族構成も暮らし方も違います
そして、建てる土地の広さや形、建築条件も一軒一軒異なります。

ある家庭にとって「最高」だった間取りが、別の家庭にとっても最高とは限りません。
誰かにとっての正解が、あなたにとっては不正解になることもあるのです。

例えば、通り抜けシューズクロークは便利ですが、敷地や建築面積に余裕がないと、玄関や他のスペースを圧迫してしまいます。
無理に採用した結果、リビングが狭くなったり、収納が減ったりしては本末転倒です。

キッチン横並びダイニングも、キッチンの向きや窓の位置によっては採光が悪くなることがあります。
「トレンドだから」と採用して、暗いダイニングで毎日食事することになったら、きっと後悔するでしょう。

「目的」に立ち返れば、手段は一つじゃない

ここで大切なのは、「なぜそれが欲しいと思ったのか」という目的に立ち返ることです。

例えば、敷地の広さ的に一階にファミリークローゼットが作れないとします。
そこで諦めてしまうのではなく、「なぜファミリークローゼットが欲しかったのか」を考えてみてください。

目的が「家事を効率化したい」「家族の支度をスムーズにしたい」ということであれば、別の方法で達成できる可能性は十分あります

例えばこんなアイデアはどうでしょう。

  • ランドリースペースに家族それぞれの小さな仮置き収納を設ける
  • 洗濯が終わったら、担当者がその収納に入れておく
  • 家族は風呂上がりに各自で取り出し、自分の部屋に持っていく

これなら「洗濯物をしまう手間」は分散され、大きなファミリークローゼットがなくても目的は達成できます。
間取りだけでなく、暮らし方の工夫で解決できることは意外と多いのです。

建築士は「引き出し」をたくさん持っている

家づくりには、「これしかない」という正解はありません
だからこそ難しいのですが、だからこそ面白いとも言えます。

大切なのは、建築士に「何が欲しいか」ではなく「どう暮らしたいか」を伝えること。

「ファミリークローゼットが欲しい」ではなく、「洗濯の手間を減らしたい」「朝の支度をスムーズにしたい」と伝えれば、建築士はその目的を達成するためのさまざまなアイデアを提案してくれます

私たち建築士は、そのための引き出しをたくさん持っています。
土地の条件や予算に合わせて、トレンドとは違う形でも、あなたの暮らしに合った間取りを一緒に考えることができます

専門家のアドバイス——トレンドに振り回されないための心得

  • 「なぜそれが欲しいのか」を言語化する
    シューズクロークが欲しいのは「玄関をすっきりさせたい」から?「外で使う道具を収納したい」から?目的が明確になれば、別の解決策も見えてきます。
  • トレンドを「必須条件」にしない
    SNSで人気の間取りは参考にはなりますが、それがないと失敗、ではありません。自分たちの土地・予算・暮らし方に合わないなら、無理に採用しない勇気も大切です。
  • 建築士には「要望」ではなく「目的」を伝える
    「ファミリークローゼットをつけてください」ではなく、「洗濯動線を楽にしたい」と伝える方が、提案の幅が広がります。
  • 間取りだけでなく「運用」も考える
    空間の使い方は、間取りだけで決まるわけではありません。家族内のルールや仕組みで補えることも多いです。
  • 「どこかで見た間取り」ではなく「自分たちの間取り」を目指す
    誰かの正解は、あなたの正解とは限りません。オンリーワンの家づくりを楽しんでください。

まとめ——あなたの家は、あなただけのもの

トレンドの間取りには、それぞれ良いところがあります。参考にするのは大いに結構です。

でも、「みんながやっているから」「これがないと失敗だから」という理由で採用するのは、少し立ち止まってみてください

あなたの家族構成、暮らし方、土地の条件、予算——それらを踏まえたうえで、本当に必要なものは何かを考える。
そして、目的を達成するための手段は一つではないことを知る。

家づくりに「これしかない」はありません。
だからこそ、あなただけのオンリーワンな家をつくることができるのです。

どこかで見たような間取りではなく、自分たちだけの家づくりを、ぜひ楽しんでください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次